アロガント級の戯言。

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じゃあ、『RTAやってみようぜ!』と広めるのは誰? 今日の戯言 20220429

 RTA in Japan への注目度が大きくなり、それを記事にするゲームメディアが現れ、『"RTA"で金が回らない時代は終わっている』という話を先日した。

 このときは『RTA』と『カネ』にのみ絞って話したが、今回はこういった情報発信が『RTAのショーケース化』を加速させることに繋がっている、という、はたまたこのブログでも取り上げたことのある話題と絡ませて話をしよう。

 RiJ の開催がどうこうという記事は除き、最近はゲームメディアからこういった記事が出ることが多くなってきている。

『◯◯(注目/有名ゲームタイトル』のスピードラン世界記録が『××(タイム)』に。(以降は飾り文)

各種メディアは情報を伝える媒体であるため、有名タイトルの RTA の記録がこのくらいだと伝えること自体、『ゲーム』に特化したメディアであるならば、近年の RTA への注目を考えることとしては自然な流れといえる。PV を見込める記事を掲載して広告収入などで運営するのが常であるため、彼らのやり方は何も間違っていない。筆者もゲーム系メディアで商業ライターとしての経験があるが、当時『より PV の稼げるハードでの記事を』とプッシュされたこともあるので実情としては間違っていないだろう。

 メディアはメディアの役割を持って正しく動いている。しかし、こういった『記録』のみの発信は、果たして『◯◯が××(タイム)でクリアできるなんてすごい!自分もやってみよう』へ繋がりにくいと考える。大道芸、イベント、見世物、ウィンドウショッピング、ショーケース。RTA in Japan の非 RTA プレイヤーからの目とメディアが加速させた『RTA は見るもの』という意識を、当該の記事は変革するに至らないと推察する。何故なら、『こんなことをしてどれだけ早くクリアしたか』ないし、記事タイトルしか見ないひとなら『◯◯というゲームはこのくらいでクリアできるのか』という思考で終わってしまい、そこから実際のプレイ動画ないしストリーミング配信の録画を見てみようというひとはほぼいないと考えるからである。

 筆者も『サクラ大戦2』というゲームを7時間50分でクリアした記録を持っているが、たとえそれがニュースサイトに取り上げられたとして、7時間50分を丸々見る人間はいないだろう。メディアが掻い摘んだ「見どころ」があればそこを見るかもしれないが、何もなければ『サクラ大戦2のRTAって7時間50分で終わるらしいよ』という情報が広がるだけだ。その記録に至るまでの経緯やゲームの仕様、どんな操作や戦術戦略が要求されるのかは多くの人々の脳内には残らない。ただ、タイムだけが残る。

 だから、メディアに載ったとしてそれが『RTA人口の増加』には繋がらず、『RTAの見世物化の加速』となってしまっているのが実情と考えている。原義的な話をするのなら、ストップウォッチとゲーム機・ソフトを用意して、電源を入れた瞬間からゲームクリアまでの時間を測ればそれが RTA の第一歩だ。筆者も、 RTA というゲームの遊び方を知った当初は、市販のストップウォッチを利用してタイムを測って、『このゲームをこんな早くクリアするのか。もっと頑張りたいな』と思ったものだ(もう13~14年も前の話になる)。『もっと頑張りたいな』の原動力は、実際に RTA を走ってみないと生まれない感情であることは間違いない。RTA ではなくても、タイムアタックを備えたレースゲームやアクションゲームも同じことが言えるはずだ。

 ゲームをプレイせず実況動画でストーリーを追う人々も増えた昨今、RTA もまた、実際のプレイは見ずに記録のまとめサイトや、こういったメディアの大々的な情報でその記録を知って終わる形に時代が変わってきたのではないか。ゲームの本編も RTA も、元来は自分でプレイしないとその『面白さ』がわからないという立場の人間としては、『RTA やってみようぜ!』と広めるのは一体どこの誰が担う・担えるものなのかと考えてしまう。現在の RTA は、よく見かける『コミュニティの一生』のコピペの衰退期にあると自分は思っている。今回の記事でゲームメディアを悪く言うつもりは、関係していた人間として全くないものの、RTA金のなる木として記事化→広告収益と昇華されるのみでコミュニティの活発化に寄与できないことは問題として在るに違いない。

 必要なのは、しっかりプレイヤーにスポットを当ててその RTA の魅力を伝えた上で、新規参入を促すアドバイスを兼ね備えた記事...スポーツで例えるなら、内村航平選手や高梨沙羅選手に、ご自身が活躍されている競技の魅力と、その選手を目指すなら何をするのがよいか?を伺うようなものだ。そうやって『一緒にこのゲームの RTA をやろうぜ!』を広めていかないと、ただの面白一発芸披露会となって、後に続くプレイヤーが現れず徐々に衰退し、再度アングラへ堕ちるだけなのではないだろうか。