アロガント級の戯言。

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DC版サクラ大戦RTA 3:44:15 レポート【2020-06-19】

文:ぜらす 2020.07.11

◯はじめに

 2014年以来実に6年ぶりに走った、初代のRTAのレポートです。それまででシリーズのRTAを最後に通したのが2017年1月末のⅤで、その後はニコ生における一部の不快なユーザーのせいでシリーズが嫌いになり全てを売却、絶縁しておりました。
 しかしながら、初代に関しては4時間を切るための調査と、4時間切りが実現できそうなチャートが途中まで組まれていた状態でした。2020年になり自身のRTA経歴を振り返ってみた時、「途中になっている」という中途半端さに後ろ髪を引かれ、ついにはシリーズのRTAに復帰。初代以外にも2・3・血潮の3作品も究め、やり残しをなくすことを目的としました。

 そうして復帰した初代で今回、目標だった4時間を無事に切ることが叶ったのでレポートを作成します。なお、動画ではタイムを3:44:13としておりますが、本レポート上では比較のしやすさのためにRTA時に使用したタイマーでの計測に準じております。2秒の差は厳密な計測開始・終了に因ります。



◯ラップタイム

 

ラップタイム

前回比(比較対象は 4:08:10)

一話終了

0:12:27

-03:00

二話終了

0:27:38

-08:18

三話終了

0:53:29

-10:29

四話終了

1:07:09

-11:30

五話終了

1:30:28

-13:16

六話終了

1:51:59

-15:07

七話終了

2:11:42

-16:03

八話終了

2:35:23

-18:04

九話終了

3:09:38

-22:33

計測終了(「終」表示)

3:44:15

-23:55



  • 環境:Dreamcast(HKT-3000) + StrikerDC
  • 計測:電源投入~「終」の表示まで。
  • レギュレーション

・ADVパート中のR押下による、移動及び演出の高速化を許可

・ムービーカット有り

・次回予告、エピローグムービーのカットは無し(世界観を重んじる)

・戦闘パート中のR押下による戦闘高速化は許可

 

◯動画

 今回はニコニコ動画YouTube に、この走りに解説をつけた動画をアップしております。実際どんなプレイが行われていたのかは以下のリンクから見ることが可能です。

 ・ニコニコ動画で見る

 ・YouTube で見る



サクラ大戦RTAのポイント

 初代と2は SRPG のようなマス目のタイプの戦闘で、実は敵の行動を再現することが可能です。例えば全員が1マス前に出て行動を終えただけの場合、敵も必ずそれに合った動きをします。ほぼ全ての敵がこの行動再現で動きを制御することが出来るので、戦闘パートは「事前にいかに良い行動再現を組んできたか」が鍵になる、戦略至上主義的なRTAです。

 従って、ADVパートでどれだけ好感度を稼ぎ、それを受けて戦闘でどう立ち回るか…反対に、この戦いを有利に進めたい・あと1マス動ければという時は、ADVパートに戻って起こすイベントを決める…というように、走るまでのチャートづくりが非常に大切なRTAとなっています。

 但しあくまで「行動」再現であり「状況」再現ではないので、与ダメ被ダメの乱数までは制御出来ません。また、移動先のマスや行動を間違ったままターンを終えてしまうとすぐに再現が崩れてしまうので、戦闘は急ぎつつ細心の注意を払いましょう。

 行動再現が不能な敵もいます。第五話・六話に登場する紅蜂隊と、七話の近衛がそれです。六話のものはまだいいですが、五話と七話でのランダム行動は時に大きな遅延を生むので、臨機応変な対応も求められます。



◯今回の挑戦におけるポイント


1.ほぼ全ての LIPS の好感度変動を調査

 2014年に 4:08:10 という記録を出した後に取り掛かった「調査」とは、サターンのエミュレータを用いて好感度・恋愛度のアドレスを見て、どの選択肢でどのくらい上がるかを全て把握するというものでした。初代には運良くデバッグモードが残されており、簡単にアドレスを探し出すことが出来ました。そしてその数値が Dreamcast への移植で恐らく弄られていなかったため、サターン版での調査結果をそのまま流用することが出来ました。

 この「調査」が2015年に第五話まで終わっていたので、RTA復帰にあたって調査を再開、完遂した後、必要な補正を得られるような行動を組むなどの戦術構築を行いました。

 調査環境は BizHawk (中身は Yabause-rr) と SSF の2つ。 SSF は MHS と呼ばれるソフトウェアを介し、エミュレーション中のゲームのメモリを閲覧していました。完全に余談ですが、2012年に初代の第一話の TAS 動画を制作しアップした際、「SSFを使えSSFならカクつかないSSFって知ってるか?」といったコメントが大量に寄せられましたが、SSF は戦闘中の QS/QL が効かないため真面目な TAS 動画に仕上げるのは不可能です。かといって BizHawk (Yabause-rr) は戦闘終了やミニゲーム終了で操作不能になるため、こちらでは断片的にしか制作出来ません。なのでサターン版で通しでの TAS 動画を作るのは現在の環境では難しいでしょう。

 

2.削ぎ落としたチャート

 2017年に実施したⅤのRTAでは、サブキャラも含めたキャラからの一定以上の好感度を獲得するなどしないと入手出来ない究極称号を捨て、フリー移動中も一切のイベントを起こさない必要最低限なチャートが生まれました。今回の初代のRTAも考えとしてはそれと同じで、移動時間はすぐに終えられるようにし、ストーリー進行の中で最良の選択を取ることにしました。上述の「調査」はこれに非常に役立ちました。チャートにどんな変更があったかは後述。



3.Dreamcast用連射機の使用

 今回使用したコントローラーである StrikerDC は、2020年6月に発売された Dreamcast 向けコントローラーです。クラウドファンディングが成功して制作されたもので、形が PlayStation 4 のコントローラーに近くなっていたり、ボタン式とトリガー式2種類のL/Rボタンが搭載されたりしているが、RTA的には連射機能がついていることが採用理由。

 Dreamcastサクラ大戦シリーズのRTAではこれまで、ASCII社のミッションスティックと呼ばれる連射機能つきコントローラーを使用していました。これは SEGA の公認を受けた唯一の連射コンで、連射のホールドや、スティックについているボタンをどれに割り振るかを選べるなどの機能もついています。しかし、初代ではミッションスティックを繋いでも一切操作を受け付けないため、通常コントローラーでRTAを行っていました。ですが StrikerDC ならば初代でも連射入力が可能だったため採用、テキスト送りの速度が向上したことによる30秒~1分程度のタイム短縮も各話でありました。逆に、それ以上の更新が起きている区間は、何らかのチャート変更が上手くはまっている証拠です。

 なお、連射機の採用それ自体に関してですが、RTA Play!様を参照して回答させていただきます。

(前略)
問題になってくるのが、戦略の優劣を競いたい時にこのイベントシーンの時間は非常に邪魔だったということです。特にドラゴンクエストシリーズの中でもDQ7などはイベントの時間だけで何時間にも及びますが、連射機を許可しないとただボタンの連打が早いだけの人が戦術が優れている人よりタイムで勝ってしまうという戦略至上主義だった当時としては許容できないことが起こってしまうのです。

DQの場合は戦闘中のメッセージ飛ばしも設定で表示速度1にするより一番遅い表示速度8にしてボタンを連打したほうが早いシリーズなどもあったことから、連射機を使うことでボタンを押すのが早いだけの人を排除して戦術の優劣だけを見ることができるから連射機が使われたという観点があったことは知っておいてもらいたいです。
(後略)

連射機のコミュニティ間の認識の差について | RTAPlay! https://rta-play.info/rta-record/article024/

 


 サクラ大戦の場合はテキスト送りの回数が非常に多く、前述の通り戦略によってタイムの良し悪しが決まる作品のため、RPGRTA 寄りの考えが適していると思います。実際に2のRTAでは自前の連射力が向上したことによると思われる差が生まれたこともあり、そういった要素を排除してスタート地点をフラットにするためにも連射機の使用に問題は無いと考えております。



◯チャートの変更点

 

1.第一話

 これまではすみれの手紙を取得し、それを利用してすみれの好感度も上げていましたが、カット。昔の調査では手紙をカットするとボスの撃破が乱数になってしまったとありましたが、ちゃんとした戦略を組み、乱数に左右されないものになりました。

 

2.第二話

 今回のチャートで最も大きな変更があったのは第二話。二話の戦闘は、マップの端から端まで動いて雑魚の全滅を要求されたり、端に向かって逃げようとするボスを食い止めて撃破しないといけなかったりと、味方5人に対して求められる内容が多い戦闘でした。そのため従来は、夜パートのフリー移動で紅蘭とすみれの好感度を大きく上げ、その2名を中心に戦闘を展開させていました。しかし今回はそのフリー移動を全てカットし、二話までで8分ほどの短縮に成功しています。この移動中に行っていたすみれのミニゲームとそれに付随するイベント群が全て無くなっていることが最も大きいでしょう。戦闘は紅蘭をメインにして突破出来るように戦術を変更、旧チャートから少し遅れてはしまったものの、移動全カットの方が圧倒的に恩恵が大きかった。

 4:08:10 の後のチャート作成では、ここまでが完成していました。連射無しの試走で累計6~7分程度の短縮が当時から見えていたので、4時間を切ることを目標に設定していました。

 

3.その他移動のカット

 第三話Aパートは全カット、第六話では衣装部屋でのマリアのイベントを起こさずサロンに直行したのとその後の手伝いパートの最適化を行っています。

 また第八話でも戦闘での補正がこれ以上つかないことを理由に移動先を変更しており、六話・八話の最適化は全 LIPS の調査を行った賜物と言えます。

 

4.ヒロイン変更

 後半の更新はこれが大きいです。従来はすみれが推しキャラだったのですみれチャートで行っていましたが、今回はあくまで最速を求めていたので、最高火力を持つカンナをヒロインにしました。また、カンナは初詣の際に恋愛度1位なので誘ってくれることからも、選択におけるロスがありません。カンナは三話で組み手を行って好感度が上がり、その後の戦闘では移動要因として活躍させるために「かばう」ことで好感度アップ。四話ではボスの元に召喚される隊員として選択し、その後再び「かばう」を使って好感度を上げていたため、最適な攻略を行うと必然的にカンナが1位になってしまうのではないでしょうか。

 ヒロイン変更により影響の出る戦闘は、八話降魔戦・猪戦、九話蝶戦、十話降魔戦・叉丹戦・ラスボス戦の6箇所です。今回カンナが採用になり大きく変更・タイム短縮に繋がったのは九話の蝶戦です。隊員の基本パラメータの話になりますが、さくら・マリア・カンナは移動力が6、すみれ・アイリス・紅蘭は移動力が5と設定されており、ボスの位置が遠い蝶戦において、この1の違いが大きなポイントになります。蝶戦ではヒロインのみ補正が最大なので、すみれとカンナを比較した場合、カンナチャートならば1ターンに1マスずつ、すみれチャートに優位を取ることが出来ます。誰よりも早くボスにたどり着き、誰よりも高い攻撃力でボスのHPを削っていくわけです。従来チャートの蝶戦は、蝶周囲の電撃塔を合体必殺で処理するために大神とすみれの二人をメインに動かし、「かばう」を使い蝶の攻撃を無力化しての攻略でした。今回の新しい戦術では、蝶のまわりにある電撃塔のどちらからも攻撃を受けない場所を事前に見つけておいたので、従来の戦術がそもそも調査不足でもありました。しかし、結果として蝶戦で2分ほどの更新が生まれました。

 それ以外の戦術に関しても、猪戦以外は前回より優れていたと自負しています。例えば従来の叉丹戦は乱数で1ターン多くかかる可能性があったのですが、今回は戦い方を合体必殺2回使用に変更し、ターンがぶれないようにしてあります。猪戦だけは何故か遅れを取ってしまいました。悪い点があった可能性もありますし、すみれがヒロインだった方が雑魚の動きや味方の行動順等がかみあっているのかもしれません。



◯実際の挑戦

 

 6月19日は金曜日、平日の夜です。疲れもあったからか、LIPS のミスで3回ほどリセット。通った走りでは LIPS のミスもなく、おおよそ現行のチャートで出せるタイムになったと思います。いくつか問題もありましたが・・・。

 

問題点1.第五話・紅蜂隊に潰された移動先

 ランダム行動である紅蜂隊が1体、カンナが移動先として予定している場所に行ってしまい、行動をズラされてしまいました。これのリカバリとして、すみれとカンナが最上層に踏み込むのをより確実なものにするために1ターン待ってから行動をしていました。プレイ時は安定を取った走りとして特に何も思いませんでしたが、一番上の台地に乗ったら行動が一番最初…つまりすみれに戻る仕様になっているのとカンナも補正が最大ですみれより高い移動力を持っているので、1ターン待たずとも突撃して何とかなったのではないかと思います。

 

問題点2.第七話・行動ミス

 七話で脇侍工場を破壊する戦闘では、近衛の動き・乱数ともに良く、中段に残るマリア・カンナの仕事が予想外に早く終わっていました。行動をしない隊員はターンが回ってきたらすぐに左+Aを入力して次に回すのですが、集中力が切れていたのか、まだ行動をしないといけないさくらの行動を終えてしまいました。これが単純な1ターンのロス。近衛に工場を塞がれることはなかったので、それだけは不幸中の幸いでした。

 

問題点3.第九話・鹿戦の乱数が良すぎたからこその

 今回の走りは乱数が非常に良かったです。先述の七話もそうですが、九話鹿戦での降魔も1発で次々に撃破することが出来ました。チャートはもちろん2発を前提に書いていたため、良すぎたためにマリアが手持ち無沙汰になってしまいました。とりあえず行動再現を崩したくないのでチャート通りの行動をしたのですが、その後もう降魔が出てこないという未来が頭に入っているのだから、さっさと定位置に戻すべきだったなと思っています。ロスとしては一番小さいのですが、柔軟さが足りていないのを如実に感じ、実は一番後味が悪い問題点。

 あと鹿戦は定位置で囲う隊員の位置をミスっていましたね。それを直す動きもしたのですが、別に囲えていれば直す必要なかったよねと。頭が固い。

 

 問題点ばかり挙げましたが、その中にもあったように乱数がよく味方してくれた走りで、乱数1発の敵の多くを一撃で倒せていました。この点は非常に良かったですし、逆に次に通す時にこれが原因でプラスがつきそうだなという怖さもありますね。走りとしては LIPS の選択肢を見失うことが数回あったのみで、基本的に安定した走りが出来ていたと思います。作品としては6年ぶり、シリーズでは3年半ぶりですが、よくやれたと思いますね。



◯今後


 最後に今後のサクラ大戦シリーズRTAについて。シリーズのRTAへの復帰はやり残しをなくすためと述べましたので、それを目指すチャートづくりと通しを血潮→3→2の順番でやっていきます。しかし、今後のチャート作成は非常に時間がかかります。理由は以下の通り。

 

・数値ベースでのチャート作成が出来ない

 初代以外の作品は全てそうですが、好感度・恋愛度のアドレスがわからない・調査出来る環境が無いので LIPS での変動値を調べようがありません。なので、攻略本や好感度上昇時のSEを頼りにやっていくしかないのですが、初代にもあったように、同じSEでも上がり幅が異なったり、無音で上がっている場合もあったりと実態が複雑です。つまり、足で稼ぐしかないというわけです。まあそれが普通といえば普通でしょうけど。初代以外の作品はプレイ中すぐロード画面に移行出来ない・再戦も出来ない仕様となっているため、1回のやり直しだけ見ても単純に時間がかかります。

 サターン版の2だけはメモリサーチが出来そうですが、2は BizHawk では第一話冒頭でエラー落ち、 SSF では QL 時にたまにフリーズして入力を受け付けなくなるなど、エミュレーションの環境側の不備も多いです。 Dreamcast / PS2 のそういう環境は一切持っていません。調査しますよ!って方いらっしゃったら連絡ください<3

 

・2013年に通して以来一度も触っていない

 これは上のものより軽微ではありますが、長時間の作品だったため試行回数も少なく、初代のように現役時代に研究をしていた痕跡もありません。なので、いちから作成していく必要があります。

 ただ、基本的には「今回の挑戦におけるポイント」の第二項で述べたように、フリー移動を削いだ最低限のイベントのみで進行するチャートになるはずなので、考え方が大きく変わるわけではありません。あくまで基本的にそうなのであり、2は多分そうはいかないでしょうね。

 

 チャート作りに時間がかかりそうな理由は以上です。これらが完成し究めた後にシリーズとどう関わっていくかは考えていません。近年 RTA にかなり注目が集まっているので、何かしらのイベントに応募をしてみるのもいいかもしれませんし、初代に限って言えば、ほぼ全ての LIPS の調査結果を持っているのでそれを利用した縛りプレイ(ガチ最低好感度プレイとか)みたいなのも出来るかもしれません。逆に、こういうことは絶対にやりませんと言えるのは、ニコ生で放送をしていた当時に語っていた Dreamcast 版4作リレーや PS2 版5作リレーのような企画や、シリーズで手をつけると明言したもの以外への進出(新とかミス巴里とか)ですね。あくまで心残りをなくすための復帰で、自身がシリーズのRTAを始めてから8年になりますが後続の走者が一切現れなかったことから、研究も発表も自給自足しかないため、粛々と進めていきます。

 レポートは以上になります。ミスもちょくちょくありましたが、個人的には満足のいく走りになりました。次回の挑戦は初代のリメイクである血潮になります。これを書いている時にはもうチャートを作り始めていますが、7年やっていなかったことや仕様変更で操作に戸惑いつつやっております。今回のように動画を作ることは無いので、生配信+レポートという形で発信する予定です。生配信は Twitch で行うので、フォローしていただけますとモチベーションに繋がります。それでは。